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愛 天使の意味するもの

真っ青な空から落ちてくる一枚の白い羽根。
ふわりふわりと漂いながら、風に吹かれ、一人の男性の所まで飛んでくる。
これは、映画フォレスト・ガンプの冒頭のシーンである。



このシーンによって、ガンプは天使を意味しているということが分かる。

現実にもたまにそのように羽根が舞い降りてくることがある。
想像が好きな人にとっては、天使が近くに居るのかもしれないと思える出来事なのかもしれない。
しかしロマンチックさの欠片もない僕としては、どこの鳩の羽根だろうと思ってしまうが、
どう考えても前者の方が、夢があって良い。

ガンプが人間ではなく、なぜ天使なのか。
まずは別の映画に登場してくる天使と比べてみよう。
アメリカではクリスマスに必ず放送される(らしい)映画、「素晴らしき哉、人生!」に登場するクラレンスという天使がいる。


見た目はおじさんで、羽もない。パッと見は人間にしか見えない。いわゆる西洋絵画に登場してくるような、羽の生えた天使ではない。しかし彼は映画の中では天使として登場してくる。実際に奇跡も起こせる。
ガンプは奇跡も起こせなければ羽もない、映画の中では少しIQの低い普通の人間である。
ではなぜ彼が天使を意味しているかと言えば、僕は人に無償の愛を与えられるからだと思っている。

多くの人間は愛されることばかり考えていて、自分が人を愛することを考えていない。
そのようなことを心理学者のエーリッヒ・フロムは言っている。
詳しくは彼の著書「愛するということ」を読んでいただきたいのだが、ここでアマゾンの内容紹介の所だけ引用させてもらおう。

愛は技術であり、学ぶことができる――
私たち現代人は、愛に渇えつつも、現実にはエネルギーの大半を、
成功、威信、金、権力といった目標のために費やし、
愛する技術を学ぼうとはしない。

愛とは、孤独な人間が孤独を癒そうとする営みであり、
愛こそが現実の社会生活の中で、より幸福に生きるための最高の技術である。


人は孤独である。一人で生まれ、一人で死んでいく。そう言う人もいる。
愛によって生まれ、家族の愛に見守られながら死んでいく。それは孤独ではないかもしれない。
多くの場合、人は孤独を恐れている。狩猟民族の頃からしたら、集団から孤立するということは死を意味していたのかもしれない。人類が農耕を始めてからは尚の事そうなったかもしれない。
長い進化の過程で見たら、現代の核家族化し、独り暮らしの人が増えている現代の社会というのは本当に一瞬のことで、そう簡単に人は適応出来ない。
SNSなどで孤独を紛らわしてはいるが、一部ではfacebookは鬱発生装置とまで言われている。
色んなもので何とか気を紛らわせながら、孤独という人生をなんとかごまかしているのが人間なのかもしれない。
欲深い人間は、もっともっと沢山のものを欲しがり、愛についても求めることを優先していく。
自分が相手から何を与えてもらえるのか。そんなことばかり考え、表層だけを繕いながら、薄っぺらい価値観の元で社会に同調していく。
どうしても欲の捨てられない人間という生き物は、その欲から何かを欲していってしまう。

最初の映画の話に戻すと、天使とされている二人には共通点がある。
二人共、自分のことではなく、人の幸せのために生きているということだ。
フロムの言う、愛する技術という、人が学ばなければいけないものを生まれつき持っている
子供は可愛い。ただ存在するだけで愛される。知らない人の子供でも、笑顔で手を振られたら多くの人が幸せな気分になってしまう。それは彼らの存在が愛される為に存在し、本当的に愛してしまうような作りになっているのだろう。
ここでフロムの言葉を引用しよう。


 幼稚な愛は「愛されているから愛する」という原則にしたがう。

 成熟した愛は「愛するから愛される」という原則にしたがう。 

 未成熟な愛は「あなたが必要だからあなたを愛する」と言い、成熟した愛は「あなたを愛しているからあなたが必要だ」と言う。



あなたを愛しているからあなたが必要というのは、ガンプがジェニーに対して言っているのとまったく同じである。ジェニーが何をしても、ガンプは彼女を認め、彼女の為に何かしてあげたいと思っている。


 誰かを愛するというのは単なる激しい感情ではない。

 それは決意であり、決断であり、約束である。

 もし愛が単なる感情にすぎないとしたら、「あなたを永遠に愛します」という約束はなんの根拠もないことになる。



ガンプはジェニーが病気で長く生きられないのを知っていながら、神に永遠の愛を誓います。
フロムが言うように、決意であり、決断であり、約束です。


 もし、自分の足で立てないという理由で、誰か他人にしがみつくとしたら、

 その相手は命の恩人にはなりうるかもしれないが、二人の関係は愛の関係ではない。



ジェニーは自立した女性ではありませんでした。だからこそ、ジェニーにとって、ガンプとの関係は愛の関係にはなれなかったのでしょう。ジェニーにとってガンプは命の恩人であり、ジェニーは安らかに死を向かえることができました。
それでもガンプには何の後悔もありません。それは彼の知性に問題があるからだけではなく、彼が天使のような心を持ってるからだと言えるのではないでしょうか。

冒頭で書いた「素晴らしき哉、人生」に登場する主人公のジョージ・ベイリイも、自分の夢がある中、人々を助けるために自分の人生を使います。彼が窮地に陥った時、今まで彼に助けられて来た人たちは喜んで彼を助けます。
ガンプが幸せかどうか、それは分かりませんが、彼は決して不幸だと思っていないのではないでしょうか。人間であるジョージ・ベイリイは、天使の助けを借りて生きることに希望を見出します。そして今まで助けてきた人々の助けによって幸福になります。彼は人の為に生きることで、孤独にならずにすみました。

天使になることは出来ませんが、幸福になるために愛するための技術を学ぶことは、いつの時代どんな人にとっても必要なことのように思います。





# by masarumizushima | 2017-10-10 10:18 | 映画

直感と合理性

本日、逃げ恥の最終回でした。
ダンスが話題になっていましたが、内容が面白かったのでダンスまで話題になったのでしょう。中身が面白くなければここまで話題になってなかったように思います。

一言にまとめるならば、契約結婚した二人が実際に結婚するという内容です。
お見合い結婚の現代版のような感じです。
最初から結末が分かるストーリーは基本的に嫌いなのですが、こういう分かりやすい恋愛コメディというのは、
純粋にエンターテイメントとして楽しめます。登場人物が良い人ばかりというのも、こういうドラマの特徴でしょうか。すこし現実性を持たせておいて、物語のほとんどは理想的な夢物語です。
そこがとても良いのでしょう。

このドラマのキモとして、二人の関係のプロセスをいかにして築いていくかといことがあるかと思います。
僕は第一話で、ちょっと突拍子もないような設定にどのようにして視聴者を物語の中に引き込むのかという所が気になりました。ミクリが、突発的に契約結婚の話を出します。これはミクリが直感的にヒラマサのことが気に入ったのだと思います。人の直感というものは面白く、一目惚れ同士で結婚したカップルが圧倒的に離婚率が低いそうです。
その点で、直感的にこの二人はうまくいくと、視聴者にとっても分かりやすい展開がおとずれます。

すったもんだがありまして、最終回、二人の関係のプロセスを再構築することになります。
今までの関係から、次の関係に発展する時、この二人のように論理的思考で関係性を再構築します。最初の感情だけの期間を通り越し、例えるならば恋人から夫婦になる時のように、様々な過程を構築し直して関係性を作り出します。

人は直感(感情)を大切にするのだけど、実はそれだけでは上手くいかないということです。
その中で面白いのは、人は論理性や統計学的なものを持ち出すと感情は置き去りにされるということです。ここにこのドラマの非現実性というか、夢物語なところになります。二人がなんとか再構築しようとする過程も、現実であればミクリの心の整理が出来ずに、まずはミクリの心の整理をするために感情的な方法でミクリの心を楽にしなければいけないでしょう。論理的に思える思考の奥にも、感情を元に論理的に進めている”つもり”になっていることが多いと思います。つまらないことで起こるケンカの多くは、それ以前の感情に原因があります。その感情がどこから来たのか人は間違えてしまうのです。
そして、それを間違えないミクリというのは、現代における女神像であり、理想的な女性というわけです。
(僕にとっては理想的ではないですが。)

安定を求める現代において、この二人が理想的な男性であり、女性であると言えます。
少し前の理想的なカップルとして、ゆりちゃんと風見さんが登場します。

今の若者は正社員になりたくてもなれず、派遣やバイトの人が多いので、不安を抱えていきています。だからこそ安定型思考になっていて、僕ら世代を含めた若者世代にとって、ひらまさは真面目で仕事が出来て収入も高くて、浮気の気配もまったくない男であり、ミクリも真面目で頭が良くて家事も完璧にこなせるけど、ちょっとの仕事ならばキチンとこなせる社会性のある女性というのは、男女どちらから見ても理想的であると言えるのではないでしょうか。

ゆりちゃんは、男女雇用機会均等法以降で、男性に負けないように頑張って仕事をしたばかりに結婚するタイミングを逃しました。多くの女性は自分がガンバレば頑張るほど、それ以上のキャリアだったり能力だったり、自分がリスペクト出来る相手を選びますから、仕事を自分の居場所にしてしまった女性にとっては、自分以上の人となると自分よりも仕事が出来て収入の多い人じゃないといけないので、必然的に恋愛対象になる男性の数は少なくなります。ましてや美人となったら、自分より上の相手を求めようと思ったら本当に数が少なくなるように思います。
一般的に女性はそのくらい体面や世間体を気にする生き物だと思います。

それが現代の理想とされるミクリは、世間体を気にすることなくマイペースに自分の行き方を選んでいます。
バリバリのキャリアウーマンであるゆりちゃんとは違う強さを持っています。

ドラマを見始めた当初、ぼくの予想としては、ヒラマサに感情移入してヒラマサになりたいと思うかなと思いました。しかし現在はミクリになりたいと思っています。ある意味、神になりたいと言っているのと変わらない願望です。

ドラマにハマりすぎる不幸というのは、ドラマの中でのことどこか現実でも求めてしまうという所にある気がします。そんなことあり得ないと思っていても、どこか期待しているのが人間というものです。
現実性がないからこそ楽しめる夢物語を、現実に当て込むことなく、皆が現実を再構築する過程を楽しんで欲しい。そんなことを思いつつ、幸せな二人を見て楽しい気分で年末がおくれてそうです。
# by masarumizushima | 2016-12-21 09:20 | 日記

個展:RePhotography

個展:RePhotography_b0033249_1254548.gif

今回の作品は写真製版の銅版画です。

近年、私は影を使って人や建物を撮ってきました。
影の中でも、シルエットを撮ることで、つまり撮っている対象を特定しないという手法で、人間や建物という象徴を撮るようにしました。それによって、この作品を見るそれぞれの人が、各自が持つ人間というイメージを膨らませる事ができます。これはシンプルなシルエットにすぎないですが、シルエットでなければ表現出来ないことだと思っています。シルエットという象徴化されたものに些細に出てくる被写体の独自性の面白さや、写真という現実に存在するものしか撮れないという点の面白さを追求しています。
影の持っている物事を象徴化して人の想像力を想起させる力というのを使い、人と人の間に生まれる記憶や感情の再構築をしようと思っています。

日程: 7月10日〜22日

時間: 13時〜19時半 (最終日は18時半)定休:水曜
オープニングパーティー 7月12日19時~21時

Daphnis et le cocon
ダフニス・エ・ル・ココン
(spacemoth 4F)
神戸市中央区栄町通り 3-1-7
栄町ビルディング 4F

www.spacemoth.org
078 392 5020


水島優
新潟生まれ。
2004年からパリを中心に活動。
東京写真文化館チャレンジ入選。米、カーメル写真美術館国際公募展入選。第三十二回日本広告写真家協会公募展入選。主に歴史的、哲学的なものから題材を得、その視覚化に努める。


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トークショーは下記の日程です。

カフェトーク@C.A.Pカフェ内
「写真とマテリアリティ」
水島 優(アーティスト)×唄 邦弘(神戸大学大学院)
司会 太田 賢佑
7月18日(金) 18:00~19:30頃
参加費:無料 ※要1ドリンクオーダー
内容:
「7月10日から22日の期間、ダフニス・エ・ル・ココンで開催されている展覧会「水島優 展 RePhotograph」では、撮影されたパリのさまざまな風景に版画の技法によってさらに手が加えられて表現された作品群が展示されています。本トー クでは、水島氏にそれらの作品群の制作プロセスについてお話して頂き、「もの(マテリアル)」としての写真、および写真と版画の表現方法の違いについて皆 様と一緒に考えてみたいと思います」

芸術と計画会議(C.A.P.)
〒650-0003
神戸市中央区山本通3-19-8
神戸市立海外移住と文化の交流センター内

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ワークショップ

個展:RePhotography_b0033249_1255825.gif



現代写真実験室 Vol.1 都市
ゲスト 唄 邦弘

神戸の都市を撮影することを通して、参加者の撮影技術と写真を使った新しい表現方法を学んでいく。

第一回 撮影しながら実験 7月19日 13時〜15時
第二回 プリントを使った実験 7月20日 13時〜15時
先約10名 1日2500円 両日4000円
マニュアル設定の出来るカメラをお持ち下さい。携帯も可。

雨天の場合や、具体的な場所については、
参加者の皆様に直接ご連絡させていただきます。

※ 主催者の都合により、
内容が変更になる場合があります。

詳しくはフェイスブックで「現代写真実験室」を検索して下さい。
# by masarumizushima | 2014-07-09 01:27 | NEWS

あの涙から30年

5月31日に最後の日を迎えた国立競技場。

東京オリンピックに向けて解体が始まり、日本の行政らしいぐだぐだな決定でヘルメットみたいな
競技場が作られるようだ。
伊東豊雄が代案を出したりしているが、誰に決定権もないままこのまま元のデザインからどんどんダサくなっていくような気がしている。

僕自身、国立競技場にも行ったことがないので思い入れもない。

たまたま見ていたニュース番組の中で、今まで知ることの出来なかったこんなエピソードを見て、涙してしまった。
建物の解体と共に忘れられていく運命にあるこのような美しいエピソードを、この機会にしっかり覚えておきたい。そう強く思った。





最後の国立競技場での早明戦

# by masarumizushima | 2014-06-02 14:22 | NEWS

D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?

久しぶりに小説を読んだ。
以前からファンである有吉玉青さんの「ぼくらはきっとすごい大人になる」を本屋で見つけ、つい手にとってしまったので、その勢いのまま電車の中ですぐに読み終わってしまった。
有吉さんの短編が特に好きで、短いからこそ、すっと流れていく心の揺れ動きが僕の心をさらりとなでていく。

日本に戻ってきて最初になんとなくこの本を選んだのは、友人が「30だし若々しいことをしよう」という連絡をくれたのがきっかけになったからだ。
記憶というのは不思議なもので、場所によってそれぞれに記憶が蓄積されているような気がする。
東京で10年以上住んでいる友人達にとって10年前というのはかなり前のようだけれども、ぼくにとってはついこの間のような気がする。僕にとって10年前のパリは遠い昔のようで、12年前の東京というのはつい最近のような気がしている。
さすがに高校生だったころがつい最近のことのようだとまでは思わないが、なんとも不思議な気分にさせられている。

滞在一週間目は観光客のような気分で東京や日本を見れているのだが、二週間も経つと現実味を帯びてきてギャップに苦しむことも出てくる。
祖国である日本で、しかも20年も住んでいた土地でここまでギャップを感じることになるとは予想もしていなかったが、ラーメンをすすって食べれなくなっている時点で気付くべきだったのかもしれない。

僕は幼い頃に大人になる自分をまったく想像出来なかった。きっとみんなそうだろう。あんな大人にはなりたくないと思っていた大人に、今の子供から見られているかもしれない。
いつの間にか年齢を重ね、いつの間にか大人の仲間入りをしている。
それは一体いつからなんだろう。

そんなことを思いながらこの小説を読んだ。
小学生が主人公の短編6編。
この小説を読んで、かつての自分の姿を思い出した。
それと同時に、すぎてしまった時間の多さにも気付かされた。

「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」というゴーギャンの絵を思い出す。 ゴーギャンはこの絵を描いた後にゴーギャンは自殺未遂をしてるわけだが、どこへ行くのかとい未来のことを考える上で、年齢の差というのは今まで思っていた以上に大きいように思う。

ナポレオンは「愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る。」と言っていますが、未来のことを語り続けるというのは狂人にしか出来ないのだろう。
そう思うと自分で自分のことを「ごく一般的な普通の人」と思っているので、生きるか死ぬか紙一重の狂いというところで生きれる自信がないので、普通の人生をこの先も送っていくような気がしてる。

小説の話に戻ると、小学生にとって未来というのは根拠なく明るいものであるし、そうあるべきものである。
しかし子供は大人が思っている以上に大人で、そしてちゃんと子供である。
その大人と子供の二面性のバランスが、年齢を重ねた今では大人の部分が多くなっただけで、未だに子供の面も沢山ある。そしてそのままおじいちゃんになって亡くなるのだろう。
自分で自覚することなくいつの間にか変わってしまったバランスを、この小説を読むことで思い出し、電車の中でぽろりと涙してしまった。

それは単純に感動したとかそんなことではなくて、いつの間にか忘れてしまっていた僕の心に爽やかな風が通っていったからだろう。
春の気持ちのいい季節に、こんな小説に出会えたことをとても嬉しく感じている。
# by masarumizushima | 2014-04-29 04:10 |

文字と言葉


by masarumizushima