我、先にタクシードライバー

きっと闇労働だ。
あいつはきっと闇だ。

仕事帰りにタクシーに乗った。
で、その日が初仕事だったらしい。
うちらで3人目だって。

それはいい。

でもそのおっさんはまったく道を知らない。
俺よりも。
はたしてパリに住んでいるのかという疑問さえ湧いて来るほど。
まずオペラガルニエが分からない。
観光客でも分かるのに。

そんで道を全部教えながら進む。もちろん俺じゃない。
道どころか交通ルールまで教えたりしてる。

「ここはバス専用だ」とか。

そして、ルーブル前を通った。

その時!

このおっさんはありえない発言をした。

「このピラミッドは何?」

二人で一瞬止まる。

このおっさんはよりにもよってルーブル美術館を知らなかったらしい。

パリに住んでる人間なら知らない人はいないでしょう。
パリというか世界でも有数の大きさで、モナリザさえあるめっちゃ有名な美術館なのに。

東京に住んでて東京タワーを知らないとか、京都に住んでて清水寺を知らないなんていうのよりもっともっとヒドい。

というかこのおっさんは地図さえ読めない気配さえしてくる。

しかも方向感覚もあまりないらしく、逆の方に進もうとしたりする。

昔、「話の聞けない男。地図の読めない女」だったか、そんなタイトルの本があった気がする。
そしたらこのガタイのいい黒人のおっさんは一体何なのだ?

それでもどうにか目的地(諦めて目的地変更したが)に着いた。
そしておっさんに初めて領収書を書かせた。
もちろんたどたどしく。

そんなおっさんが妙に可愛らしく、だんだんと親近感がわいてきてしまう。

最後に、降りてから「幸運を祈る!頑張って。」みたいな事を言ってみる。

日が落ちた街中を、初心者のおっさんが運転するタクシーが走り去って行く。
私はその車が走り去るのをゆっくり見ていた。

そして近くの地下鉄乗り場から家へと帰った。
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by masarumizushima | 2004-11-21 02:52

文字と言葉


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